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NAS HDDの選び方:用途に合った信頼性重視の選定基準

NAS HDDの選び方:用途に合った信頼性重視の選定基準

22/08/2025

NASを導入する目的は、データの保管と共有を安定して行うことにあります。その基盤となるのが、HDDの選定です。容量や価格にばかり目が行きがちだが、実際には耐久性振動対策エラー処理の仕組みが、日々の安定運用に大きく影響します。

主要なポイント:

  • NASは24時間365日稼働するため、一般向けHDDではなく、耐久性・振動対策・エラー処理に優れたNAS専用HDDを選ぶことが重要です。
  • 主要スペック(回転数、キャッシュ容量、MTBF、TLER対応など)が性能と信頼性を左右し、用途に応じた最適化が必要です。
  • 家庭用は静音性と省電力重視の5400RPM、動画や高負荷用途は7200RPMと大容量キャッシュ、ビジネス用は高耐久・RAID対応モデルが適しています。
  • よくある失敗は「一般HDDの流用」「振動対策の無視」「互換性未確認」であり、用途別選定と公式互換リスト確認がトラブル回避の鍵です。
UGREEN NASストレージは、小規模オフィスにおけるファイル共有とストレージに最適です。

一般向けHDDとNAS向けHDDの違い

見た目はどれも似たようなHDDでも、内部の設計や動作仕様には大きな違いがあります。NASに適したHDDを選ぶには、この違いを正しく把握しておく必要があります。

設計思想の違い

一般的なデスクトップ用HDDは、断続的な使用を前提に設計されています。仕事の合間にファイルを保存したり、数小時だけ稼働させたりする程度の使い方なら、十分に対応できる構造です。

一方、NAS用HDDは、昼夜問わず連続稼働する状況を想定して作られています。熱や振動への対策、電力効率、エラー処理の速度など、安定動作に必要な要素が強化されています。こうした違いをより詳しく理解したい方は、NAS用HDDとPC用HDDの違いを解説したガイドも参考になります。

ファームウェアの最適化

また、NAS用HDDには「TLER(Time-Limited Error Recovery)」と呼ばれる機能が搭載されている場合が多いです。これは、エラー発生時に長時間停止することなく処理を切り上げ、RAIDコントローラー側で対応できるようにするための仕組みです。これがないと、再構築時などに処理が止まり、リビルド失敗やデータ消失の原因になりかねません。

振動制御の重要性

振動制御も重要な違いのひとつです。NASでは複数のHDDを近接して設置するため、隣のHDDから伝わる微細な振動が故障の引き金になることがあります。NAS向けHDDは、これを抑えるためのハードウェア補強やファームウェア制御が施されています。

「安いHDDでも回ればいい」と考えて一般モデルを導入し、数ヶ月でトラブルに見舞われるケースは少なくありません。価格差には、それなりの理由があります。

重要スペックの見方と注意点

NAS向けHDDを選ぶとき、容量や価格だけでなく、性能や信頼性に影響する仕様をしっかり確認することが大切です。回転数、キャッシュ容量、信頼性の指標など、仕様の違いがNASの使い勝手やデータの安全性を左右します。

回転数(RPM)

ディスクの回転速度は、アクセス速度や発熱、動作音に関係します。

  • 5400RPM:静音性と低発熱が特徴。家庭での写真や動画保存に適しており、消費電力も抑えられます。たとえば、WD Red Plus(5400RPM)は静かな環境を重視する人に人気です。
  • 7200RPM:読み書きが速く、ビジネス用途や高負荷のデータ処理に最適。Seagate IronWolf(7200RPM)は、動画編集やデータベースに適しています。ただし、騒音や発熱がやや増える点に注意してください。

注意点:NASの放熱性能をご確認ください。7200RPMのハードディスクを選択する場合、ファン設定を調整して発熱を管理してください。UGREENの多段階設定に対応したスマート放熱ファンを搭載したNASストレージを使用すれば、これらの調整を簡単に実施できます。

キャッシュ容量

キャッシュは、読み書きの一時的なバッファ領域。大きいほどデータの処理がスムーズになりやすい:

  • 64MB:軽い作業(例:ファイル共有)に十分。
  • 128MB~256MB:動画ストリーミングや複数ユーザーでの同時アクセスに適し、処理がスムーズ。たとえば、Toshiba N300(256MB)は高負荷環境で安定します。

注意点:キャッシュが大きいほど価格が上がるため、NASの用途(例:個人用かビジネス用か)に合わせて選びましょう。

MTBF(平均故障間隔)・通電時間の想定

NASでは長時間稼働が前提になるため、MTBFが高く、通電時間が明記されているHDDを選んだほうが安心できます。たとえば、Seagate IronWolf Proは年間300TBの書き込み耐久性を保証し、長期運用に適しています。

耐振動設計とマルチドライブ対応

2台以上のHDDを並べて使う場合、振動がデータエラーや故障の原因になります。NAS向けHDDは、振動を抑える設計(例:回転振動センサー)が施されています。たとえば、WD Red Proは「マルチドライブ対応」と明記され、RAID 5や6で安定します。

SMARTとTLER(またはERC)

SMARTは自己診断機能で、HDDの異常兆候を早めに把握できます。TLER(Time-Limited Error Recovery)は、RAID構成でのエラー処理を高速化する仕組み。これが無効だと、ディスクが応答しない時間が長くなり、RAIDコントローラーが異常と判断してしまう恐れがあります。

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選び方のコツ

HDDを選ぶ際は,NASの用途と環境を考慮して仕様をチェックします。たとえば、家庭用なら5400RPMと128MBキャッシュで十分ですが、ビジネス用なら7200RPMと256MBキャッシュ、TLER対応を選びましょう。製品の仕様表やメーカーの推奨リスト(例:UGREENの互換性リスト)を確認すると、失敗を防げます。

用途別の選び方

目的に合わないHDDを選ぶと、動作が不安定になったり、耐久性に不安が残ったりします。ここでは、よくある使用パターン別に適したHDDの特徴を整理しておきます。

バックアップ中心の運用

ファイルの待避やアーカイブ保存を目的にしている場合、アクセス頻度はそれほど高くありません。こうした運用では、静音性と低消費電力がポイントになります。

  • 推奨仕様:5400RPM、4TB~8TB、128MBキャッシュ。低発熱で騒音が少ないモデルを選びましょう。
  • 推奨モデル:WD Red Plus(4TB、5400RPM)は、静かな動作と省電力性能で家庭のバックアップに最適です。

ポイント:NASを寝室やリビングに置く場合,5400RPMのモデルは騒音が気になりにくいです。
:家族の写真や書類を保存する2ベイNASなら、4TBのWD Red Plusを2台でRAID 1を組むと、容量と安全性がバランスよく確保できます。

動画保存やストリーミング利用

動画を頻繁に読み出す用途では、転送速度が安定していることが重要になる。

  • 推奨仕様:7200RPM、4TB~12TB、128MB~256MBキャッシュ。キャッシュ容量が大きいモデルは、動画のスムーズな再生を支えます。
  • 推奨モデル:Seagate IronWolf(6TB、7200RPM、256MBキャッシュ)は、4K動画のストリーミングや複数ユーザーでのアクセスに適しています。

ポイント:動画編集や高解像度コンテンツを扱うなら、7200RPMでキャッシュが256MBのモデルを選ぶと、再生時の遅延が減ります。NASのネットワーク速度(例:1GbE以上)も確認してください。
:ホームシアター用NASで映画やドラマを保存する場合、6TBのSeagate IronWolfを4ベイNASに搭載すると、十分な容量と高速な読み出しが得られます。

RAID構成・ビジネス利用

業務用ファイルの共有やRAIDを組んでの冗長化を前提とするなら、高耐久かつRAID対応のHDDを選びたいところです。

  • 推奨仕様:7200RPM、8TB~16TB、256MBキャッシュ、TLER対応。高いMTBF(例:120万時間)と振動耐性が必須です。
  • 推奨モデル:WD Red Pro(8TB、7200RPM)やSeagate IronWolf Pro(12TB)は、RAID 5や6での高信頼性と高速処理を保証します。

ポイント:複数ユーザーでのデータ共有や仮想化では、TLER(エラー回復の最適化)が再構築の安定性を高めます。4ベイ以上のNASでは、振動耐性の高いモデルを選んでください。
:小規模オフィスでデータ共有とバックアップを行う場合、8TBのWD Red Proを4台でRAID 5を組むと、容量、耐久性、速度のバランスが取れます。

用途を整理したうえで選定すると、HDDの選択ミスによる後悔は減らせます。

よくある選定ミスとその対策

評判だけで決めてしまう

レビューやランキングは参考になることもあるが、使用環境が異なれば評価の基準も変わります。評価が高くても、用途が合っていなければトラブルのもと。自分のNAS構成や稼働条件を前提に判断することが大切です。

デスクトップ用HDDをそのまま使う

コストを抑えたいという理由で、家庭用のHDDをNASに組み込んでしまうケースは多いです。データの読み書き自体は問題なくできるが、長期間の連続運用に耐えられず、早期故障やRAIDエラーの原因になることがあります。

対振動性を無視して複数台を搭載する

複数BayのNASでは、HDD同士がわずかな振動でも影響を与え合います。これを軽視すると、異音やデータエラーが発生しやすくなります。マルチドライブ対応と記載のあるモデルを選ぶと,共振による不具合を避けやすくなります。

互換性を確認せずに購入する

NASメーカーが動作確認を取っていないHDDを選んだ場合、ファームウェアの相性によっては正しく認識されないことがあります。公式サイトで互換リストを確認し、対応モデルかどうかを事前にチェックしておくのが確実です。

まとめ

スペック表や価格だけで選ぶと、あとで後悔することになりかねません。長く安定して使たいなら、少し手間をかけてでも、用途に合ったHDDをしっかり選んでおくほうが結果的に安心できます。

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