RAIDリビルド時間を短縮する6つの具体的方法(2025 年 8 月に更新)
前回の記事では、NASのデータを安全に守るためにRAID構成の選び方について詳しく議論しました。その中で特に「RAID 5」を推奨できない理由として挙げたのが、大容量ディスクでの再構築(リビルド)時に発生する二次障害リスクです。
特に日本のように地震が頻繁に発生する環境では、リビルド時間が長いと、その間にさらなるディスク障害が起こるリスクが高まります。こうしたリスクを最小限に抑えるためにも、RAIDリビルドに影響する要因をよく理解し、時間を短縮する具体的な対策を知っておく必要があります。
本記事の要点:
- RAID再構築の時間は、ディスク容量・速度・RAIDレベル・同時アクセスの有無によって大きく左右される。
- ホットスペアの事前準備や適切なドライブ選定、再構築優先度の設定で復旧時間を短縮できる。
- 再構築中はI/O性能が低下するため、夜間や休日に実行し、不要なデータ転送を避けることが望ましい。
- 二重障害のリスクに備え、常にバックアップと復旧体制を整えておくことが不可欠である。
- 地震リスクが高い日本では、リビルド時間を短縮し、RAID 6やUPS(無停電電源装置)などを活用することで、データ損失のリスクを最小限に抑えることが重要です。
RAIDの再構築とは何ですか?
RAIDリビルドとは、RAIDアレイ内のディスクが故障した際に、残りのディスクに保存されたパリティ情報(データ復元用の情報)を使って、交換した新しいディスクにデータを再構築するプロセスのことです。この作業により、RAIDアレイが元の冗長性を取り戻し、データが再び安全に保護されます。
RAIDレベルによる違い
- RAID 5: 単一のパリティディスクを使用するため、リビルドは比較的速く完了します。パリティ計算がシンプルなので、処理に時間がかかりません。
- RAID 6: 二重のパリティ計算が必要なため、リビルドにはRAID 5よりも時間がかかりますが、2台のディスクが故障してもデータが守られる高い耐障害性があります。
重要性
リビルド時間を短くすることは、追加のディスク障害によるデータ損失のリスクを減らすために重要です。リビルドが完了するまでの間、RAIDアレイは脆弱な状態にあり、さらなる故障が起きるとデータが失われる可能性があります。特に、地震が多い日本では、複数のディスクが立て続けに故障するリスクを考慮し、リビルド時間を最小限に抑えることが欠かせません。
リビルド時間に影響する要因
NASのRAIDリビルド時間は、いくつかの要因によって変わります。ここでは、特に重要な5つのポイントを、身近な例とともにわかりやすく説明します。
ディスクのサイズ
ディスクの容量が大きいほど、処理するデータ量が増えるため、リビルドに時間がかかります。
- 例: 4TBのディスクなら数時間で終わるかもしれませんが、10TBだと1日以上かかることもあります。
ディスクの速度
ディスクの読み書き速度が速ければ、リビルドも早く終わります。
- 例: たとえば、5400RPMのHDDよりも、7200RPMやSSDの方が再構築速度は速くなります。
深く掘り下げる:SSDの利点。
システム負荷
NAS への通常通りのアクセスが続いている場合は(例えば動画のストリーミングやバックアップ)、再構築に使えるリソースが限られ、そのため時間が延びる傾向があります。
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賢い使い方:
家族みんなが寝ている深夜にリビルドを始めると、使用率が低いので早く終わりやすいです。
RAIDレベル
RAID 5とRAID 6では、必要なパリティ計算の量が異なるため、再構築時間にも差が出ます。RAID 6はより安全性が高い代わりに、処理負荷も大きくなります。
具体的な計算例
例1:RAID 5、3台構成、1TBのHDD(7200RPM)を使用
この場合、再構築にはおおよそ 8〜12時間 かかる可能性があります。バックグラウンドで再構築が進むため、NASの使用状況によっても差が出ます。
例2:RAID 6、6台構成、各2TBのHDD(5400RPM)を使用
再構築対象となるデータ量は4台分。アクセスが並行して発生している場合、20時間以上 かかることもあります。
RAIDリビルド時間を短縮する5つの具体的方法
「NASのRAIDリビルド時間を少しでも短くしたい」と思っている人のために、ここでは具体的な方法を5つ紹介します。
高性能ディスクの使用
同じ容量でも、ディスクの種類や回転数、キャッシュ容量によって再構築速度は変わります。SSDや高RPMのHDDみたいな高速ディスクを使います。データの読み書きが速いので、リビルド時間も短縮できます。予算があればSSDを試してみましょう。
ホットスペアを事前に用意する
空きベイがある場合、あらかじめホットスペアを登録しておくことで、ディスク障害発生と同時に再構築が自動で始まります。手動でドライブを交換するよりも、再構築の開始が早くなり、復旧までの時間も短くなります。注意点として、ストレージプールにホットスペアを追加するには未使用のハードディスクが必要です。また、追加後は障害が発生してリビルドが行われるまで、このディスクはデータ保存には使用されません。
オフピーク時のリビルド計画
システムが暇な時間帯(夜間や週末)にリビルドをスケジュールします。NASが他の作業で忙しくないので、リビルドに集中できます。みんなが寝てる深夜にスタートすれば、朝には終わってるかもしれませんね。
再構築の優先度設定を確認する
NASストレージ管理の「詳細設定」では、ストレージプールのリビルド優先度とリカバリ戦略を最適化することで、復旧処理を高速化できます。
UGREEN NASヒント:これらの方法を組み合わせることで、再構築時間を大幅に短縮できます。たとえば、RAID 5にSSDとホットスペアを組み合わせ、高速設定を選べば、1TBの再構築が数時間で終わる場合もあります。ただし、高速化を追求するあまり、システムの安定性を損なわないよう、設定前にバックアップを取っておくことが大切です。
システム負荷の軽減
RAIDの再構築が始まると、NASの動作に変化が出ることがあります。特に業務時間中に実施すると、ファイルの読み書きが遅くなったり、アプリケーションのレスポンスが悪くなったりすることがあります。原因は、再構築がディスクI/OやCPUに一定の負荷をかけるためです。
I/Oパフォーマンス低下の要因
再構築は、すべてのデータドriveに対して連続的に読み書きを行います。この処理が優先されることで、通常のファイルアクセスが後回しになり、操作が遅く感じられます。
負荷のかかる時間帯を避ける
業務が集中する時間に再構築を実施すると、影響が大きくなります。夜間や休日に優先度を「リビルド優先」に切り替えるのが無難です。
データへの影響を最小限に抑える工夫
同時に大量のデータ転送やバックアップを実施すると、再構築と重なってNAS全体が不安定になる場合があります。再構築中は、不要なファイル移動や大容量の同期を控えると、結果的にどちらも安定して進みます。
また、RAID再構築中は2回目のディスク障害が発生すると取り返しがつかないケースもあるため、バックアップデータの整備と保存先の分散は常に意識しておく必要があります。
RAIDレベルの選択
RAID 5はパリティが1つで速いですが、RAID 6は2つで安心感アップします。地震が多い日本だと、RAID 6の安全性が心強いですよね。
まとめ
地震対策を考慮する必要がある日本では、RAID 6の高い冗長性やUPS(無停電電源装置)を組み合わせると安心です。NASが振動でダメージを受けてもデータが失われにくいでしょう。