NAS容量の選び方ガイド:RAIDとBay数で変わる実効容量の考え方
NASを選ぶとき、HDDの容量をどう決めるかで迷う人は少なくありません。多すぎると予算に無駄が出るし、少なすぎるとすぐに使い切ってしまう。容量の選び方は単なる足し算では済みません。
本ガイドでは、データの増加率計算方法、RAID1/5/6ごとの実効容量比較、8割運用ルールの重要性を解説。長期的に使えるNASの容量設計が可能になります。
表示容量と実効容量の違いを把握しよう
HDDのラベルに書かれている容量は、あくまで理論上の数値にすぎません。NASでRAIDを組んだ場合、実際に使える容量はそこからさらに差し引かれます。RAIDとは何か?をあらかじめ理解しておくと、構成ごとの容量の違いや、実効容量が減る理由も納得しやすくなります。

データ量の計算方法
自分のデータ量を把握しましょう。現在のデータ(例:写真、動画、書類)と今後2~3年の増加分を予測します。以下は目安です:
- 写真:10万枚(1枚10MB)で約1TB。
- 動画:4K動画1時間(10GB)で100時間なら1TB。
- 書類:10万ファイル(1MB)で約100GB。
たとえば、家族の写真5万枚(500GB)と動画50時間(500GB)を保存し、毎年200GB増える場合、3年後には約1.6TB必要です。余裕を持たせるため、2TB以上を考えると安心です。
RAID構成と実効容量
RAIDはデータの安全性を高めますが、表示容量(HDDの合計容量)と実効容量(実際に使える容量)が異なります。
RAID構成 | HDD構成例 | 表示容量 | 実効容量 | 特徴 |
---|---|---|---|---|
RAID 0 | 4TB×2台 | 8TB | 8TB | 高速だが故障で全データ消失 |
RAID 1 | 4TB×2台 | 8TB | 4TB | 1台故障でもデータ保護 |
RAID 5 | 4TB×3台 | 12TB | 8TB | 1台故障対応、容量効率良い |
RAID 6 | 4TB×4台 | 16TB | 8TB | 2台故障対応、信頼性高い |
容量を考えるときには、こうした構成の違いを前提にしておく必要があります。ラベルの数字だけを見て判断すると、思っていたより保存できないという事態になりやすいです。
拡張性とBay数を考慮した組み合わせ
NASのHDD容量を決める際、ベイ数(HDDを搭載できるスロットの数)と拡張性の計画が大きな役割を果たします。空きベイがあれば後でHDDを追加できますが、ベイ数が少ない場合は最初から余裕のある容量を選ぶ必要があります。
2ベイNAS:余裕を持った容量を選ぶ
Bayが2つしかないモデルでは、HDD2台でのRAID 1構成が現実的な選択肢になります。この場合、片方が完全なバックアップとして動くため、使える容量は1台分に限られます。足りなくなったときは、大容量のHDDに交換するしかありません。
{{UGPRODUCT}}
4ベイ以上:RAID 5でバランスと拡張性を
4Bayモデルになると、構成の自由度が高まります。たとえば、4TBのHDDを4台使ってRAID 5を組めば、12TB前後の実効容量が得られます。1台が故障してもデータは保たれるし、後から1台だけ大きい容量に変えることもできます。RAIDの再構成は必要になるが、柔軟性は高いです。
{{UGPRODUCT}}
空きBayが残っていれば、最初から大容量のHDDをそろえる必要はありません。手元のデータ量に合わせて段階的に追加することで、初期費用を抑えることもできます。
異なる容量のHDDを組み合わせる注意点
同じNASに異なる容量のHDDを組み合わせる場合、RAID構成では最小容量に制限されます。
構成の自由度が高くなるほど、選択肢も広がります。ただ、その分だけ構成ミスによるトラブルも起きやすくなります。事前にRAID容量の試算ツールを使って、構成ごとの実効容量を把握しておくと、Bay数に応じた適切な判断がしやすくなります。
よくある選定ミスと避けるポイント
多くの人が陥りがちな失敗を知り、適切な計画を立てることで、効率的で安心なNAS運用が実現します。
合計容量だけで見積もってしまう
複数台のHDDを合計して「これだけあれば安心」と考えてしまうと、RAID構成による実効容量の減少を見落としやすいものです。
構成ごとの容量計算は、購入前に必ず確認しておくべき項目のひとつです。
上限ギリギリの運用を前提にしてしまう
「今ちょうど入るから大丈夫」と思っても、半年後には足りなくなっていることが多いです。容量が一杯に近づくと、動作も不安定になりやすいので、使用率が8割を超えない程度に余裕を持たせた構成が望ましいと言えます。
データの増加を見越していない
既存データをNASに移行するだけで満足し、今後の増加を考慮していないケースも少なくありません。写真や動画、日々の業務ファイルなどは、少しずつ確実に増えていきます。年単位でどれくらい増えるかを見積もり、それに合わせて設計しておくと無理がありません。
HDDの単体容量だけで判断する
Bay数やRAID構成を無視して、単に「このHDDは大きいから安心」と考えてしまうと、全体のバランスが崩れることがあります。RAID構成による冗長性や容量効率の違いを理解しておくことも重要です。たとえば、RAID構成ごとの冗長性と容量のバランスを事前に把握しておくことで、自分の用途に合ったHDD構成を選びやすくなります。2台構成でのRAID 1なのか、4Bay構成でのRAID 5なのかで、同じ8TBでも意味合いは変わってきます。
まとめ
データは常に増えていくものです。導入時にギリギリの構成を選んでしまうと、近いうちに再構成やHDDの買い足しに追われることになります。用途や保存頻度、Bay数、拡張のしやすさを踏まえて構成を組めば、後悔しない選び方ができます。