RAIDレベル変更する方法 2025年版
RAIDの構成変更は、単に設定を変えるだけの作業ではありません。データの安全性、移行中の停止リスク、機器の対応状況など、慎重な判断が求められます。
知見:
- 変更を実行する前に、対象のRAIDタイプに必要なハードディスクの最低本数を満たしていることと、NAS機器そのものが新しい構成に対応していることを確認する必要があります。
- 絶対に必須な事前準備は、すべてのデータの完全なバックアップです。
- 移行中は再構築の進行状況、ドライブ温度、SMART情報、システムログを継続的に監視する必要があります。
- 変更が完了した後は、データの整合性を確認し、新しい構成下でのパフォーマンスを計測・評価し、バックアップ戦略を見直すことが、安定した運用を確立するための最終ステップです。
事前準備
RAIDレベルの変更は、構成を見直すだけでなく、運用に関わるリスクと向き合う作業でもあります。準備段階で情報を整理し、手順を誤らなければ、切り替えによる影響を最小限に抑えられます。
ハードディスクの条件を確認する
ストレージプールのRAIDタイプを変更する際、UGREEN NASには十分な数の利用可能なハードディスクが必要です。以下の表は、各RAIDタイプに必要な最低限のハードディスク数を示しています:
RAIDタイプ | 必要な最低限のハードディスク数 |
---|---|
RAID 0 | 2 |
RAID 1 | 2 |
RAID 5 | 3 |
RAID 6 | 4 |
RAID 10 | 4 |
深く掘り下げる:RAIDとは何か?
現在のRAID構成を把握する
現行のRAIDレベル、ドライブ数、合計容量、空きベイの有無などを整理します。構成によっては、新たにディスクを追加しないと変更できないケースもあります。たとえば、RAID1からRAID5へ移行するには、追加のドライブが必要です。より詳しい各RAIDレベルの特徴や選び方については、NASにおけるRAID構成の選び方ガイドも参考になります。
現在のRAIDタイプ | 変更可能なRAIDタイプ | 必要な追加ディスク数 | 備考 |
---|---|---|---|
RAID 0 | RAID 1, 5, 6, 10 | 1+ (タイプによる) | データバックアップ推奨 |
RAID 1 | RAID 5, 6, 10 | 1+ | |
RAID 5 | RAID 6, 10 | 1+ | RAID 1には不可 |
RAID 6 | RAID 10 | 0 | ディスク数が十分な場合 |
RAID 10 | - | - | 他のタイプへの変換不可 |
※ 実際に必要なディスク数はストレージシステムや既存のディスク数によって異なります
※ 変換前には必ずデータのバックアップを推奨します
バックアップは変更前に完了させる
変更作業に入る前に、すべてのデータのバックアップを確実に取り終えておく必要があります。外部ストレージやクラウドサービスなどに複製し、保存先の構造や復元方法も明確にしておきます。
「念のため」ではなく、万が一に備えた確保です。RAID変更中に再構築が途中で停止した場合や、操作を誤ってデータが削除された場合、バックアップの有無が損害の大きさを左右します。
ハードウェアの互換性を確認する
使用中のNASやRAIDカードが、目標とするRAIDレベルに対応しているかどうかを確認します。ファームウェアのバージョンによっては、以前サポートされていなかったRAID構成が有効になることもあるため、最新の状態にアップデートされていることもあわせて確認します。
RAIDレベル変更の手順
ストレージプールの状態が正常であることを確認します。新しいハードディスクをストレージプールに追加する際、少なくとも1台の未使用で健康状態が正常なハードディスクが必要です。新しいハードディスクの容量は、ストレージプール内の最小ハードディスク容量以上である必要があります。また、すべてのハードディスクのタイプとモデルが一致していることをお勧めします。

ストレージプールのRAIDタイプを変更するには:
- [ストレージ] > [ストレージ管理] > [ストレージプールとスペース]に進みます。
- RAIDタイプを変更したいストレージプールを見つけ、右側の「…」アイコンをクリックして、「RAIDタイプの変更」を選択します。
- ポップアップしたオプションから、変更したいRAIDタイプを選択し、「今すぐ変更する」をクリックします。
- ストレージプールに追加する利用可能なハードディスクを選択します。
- 設定を確認し、「適用」をクリックして作成を完了します。変更中は、ストレージプールの状態が「RAIDタイプ変更中」に変わります。変更が完了すると、ストレージプールの状態は「正常」に戻ります。ストレージプールの右側の「…」アイコンをクリックして、現在のRAIDタイプを確認できます。

進行中の監視ポイント
RAIDレベルの変更は、構成によっては数時間から数十時間に及ぶことがあります。そのあいだ、システムが安定して処理を継続できているかどうかを確認することは、失敗を防ぐうえで欠かせません。
再構築の進行状況と所要時間
NASやRAIDコントローラーには、再構築の進捗を示すモニター機能が搭載されています。残り時間、処理率、処理速度などを定期的に確認し、進行が止まっていないかをチェックします。
進行が極端に遅い、または一定の割合で止まっている場合、ドライブの不具合やシステム負荷による遅延が疑われます。作業の一時中断やドライブ交換を判断する材料として、進捗の傾向を冷静に見極めることが求められます。
ドライブ温度の変化
再構築中はドライブへのアクセスが集中し、通常時よりも発熱が増します。高温状態が続くと、ディスク寿命の低下や予期せぬ障害の要因となります。
管理画面で温度の上昇傾向を確認し、警告レベルに達しそうな場合は、通風経路の確認、ファンの清掃、冷却装置の増設などの対応を検討してください。温度が60℃を超える場合は、作業の中断も視野に入れる必要があります。
SMART情報の確認
作業中のディスクには負荷がかかるため、交換間近の劣化したディスクが突然エラーを出すことがあります。SMART情報(Self-Monitoring, Analysis and Reporting Technology)は、ドライブの健康状態を把握するための指標として有効です。
再配置セクタ数、代替処理済みセクタ数、読み取りエラー率などに異常がないか、作業中も定期的に確認します。値に急な変動や異常が見られた場合は、ディスクの交換または再構築の中断を検討する判断材料となります。
システムログのエラーメッセージ
NASやRAIDシステムのログには、ユーザーインターフェースでは確認できない内部エラーや予兆が記録されます。ディスクI/Oエラー、タイムアウト、ボリュームの同期異常など、細かな異常を早期に把握するために、ログの自動通知設定や定期確認を行うと安心です。
作業が長時間に及ぶ場合は、定期的にログを保存し、万が一の際に復旧のヒントとして活用できるようにしておくと効果的です。
検証と最適化
RAIDレベルの変更が完了しても、それだけで作業が終わったとは言えません。構成が正しく適用されているか、性能に問題がないか、運用に耐えうる状態にあるかを確認しておく必要があります。この段階での見落としは、数日後や数週間後に不具合として現れることがあります。
データの整合性を確認する
変更後のストレージには、過去のデータと、新しい構成によって追加された領域が共存しています。まずは、既存データが破損していないことを確かめることから始めます。
具体的には、整合性チェックツールやハッシュ値の照合を行い、意図しない書き換えや読み取り不能なファイルが存在しないかを検査します。ファイルシステムによっては、自動でエラー検出や修復を実行する機能があるため、管理画面やCLIでの状態確認も合わせて行っておくと確実です。
必要に応じて、業務上重要なファイルをランダムに抽出して開き、操作や保存が正常に行えるかを試すのも有効です。
パフォーマンスを計測して比較する
RAID構成の変更は、読み書きの性能に影響を与えることがあります。変更前後で速度や応答性がどう変化したかを記録しておくと、今後の判断に役立ちます。
IOPS(秒間の入出力回数)、スループット(MB/s)、レイテンシ(応答遅延)といった指標を計測し、想定していた性能と差がないかを確認します。予想以上に速度が出ていない場合は、RAID構成とディスク性能の不一致、キャッシュ設定、ファイルシステムの最適化不足が原因の可能性もあります。
ベンチマークは負荷がかかるため、業務の影響がないタイミングで実施してください。
バックアップ運用を再設計する
RAID構成が変わると、データの保存形式や容量効率が変わるだけでなく、障害時の復旧手順や対応時間も変わります。これに合わせて、バックアップの方針やスケジュールも見直しておく必要があります。
たとえば、容量が増加した場合は、バックアップ先の容量や送信速度も見直す必要があります。また、冗長性が高くなったからといって、バックアップの頻度を減らすことには慎重になるべきです。RAIDは障害対応の仕組みであり、バックアップの代わりではないためです。