NASドライブ交換を安全に行う方法
NASのドライブ交換は決して単純な作業ではありません。互換性、RAIDの再構築、データ保全、再起動のタイミングなど、見落としがちな要素がいくつも存在します。適切な手順と準備を欠けば、時間の浪費だけでなく、大切なデータを失う可能性すらあります。
知見:
- 交換前には必ずフルバックアップを取り、復元可能性まで確認しておく必要があります。
- 新しいドライブは既存より大きな容量を持ち、かつCMR方式などNASに適した仕様を選ぶことが推奨されます。
- RAID再構築中は性能低下や停電リスクがあるため、UPS導入や交換タイミングの工夫が重要です。
事前準備:交換プロセスの基盤を整える
ドライブの交換に取りかかる前に、いくつかの確認と準備が必要です。
現在の構成を把握する
次に、現時点のRAID構成とドライブの状態を確認します。RAID 1、RAID 5など構成によって再構築の手順や所要時間が変わります。使用中のドライブの型番、容量、S.M.A.R.T.情報も控えておくと、交換中のトラブル対応がスムーズになります。RAIDごとの特徴や選び方のポイントは、RAID構成の選び方ガイドで整理されているので、事前に参照しておくと判断がより確実になります。
また、ストレージプールやボリューム構成が複雑な場合、交換前に簡単な構成図をメモしておくとよいでしょう。

重点バックアップは不可欠
どれほど慎重に進めたとしても、RAIDの再構築やドライブの初期不良による予期せぬトラブルは起こり得ます。交換前には、外付けHDDやクラウドサービスなどを使って、すべてのデータのバックアップを取っておくことが欠かせません。スナップショットだけでは不十分な場合があります。復元可能かどうか、バックアップデータの実体を事前に確認しておくことも重要です。
詳細解説:2025年データバックアップソリューション。
| バックアップ方法 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 外部ハードディスクにバックアップする | 操作が簡単で、インターネット接続は不要 バックアップ速度が速い データの安全性が高い |
物理ストレージが必要 容量制限がある |
| クラウド同期によるリモートサーバーにバックアップする | 物理ストレージ不要 どこからでもアクセス可能 データ冗長性が確保される |
ネットワーク接続が必要 追加費用が発生 サードパーティ依存のリスクあり |
交換用ドライブ選定 ― “互換性は命綱”
交換に使うドライブの選定は、作業全体の成否に直結します。見た目が同じでも、NASで安定動作するとは限りません。
容量は既存より大きく
RAID構成を維持したまま交換して容量を増やす場合、すべての新しいドライブは、元のものより同等以上の容量が必要です。RAID5やRAID6では、構成内の最も小さい容量に合わせて制限されるため、古いドライブより容量が小さいものを混在させると、拡張になりません。
また、RAID再構築には時間がかかるため、高速な読み書き性能や十分なキャッシュ容量を持った製品を選ぶと、全体の負担を抑えやすくなります。さらに、NASで安定稼働させるための適切なHDD選びについては、NAS向けHDD購入ガイドで詳しく解説していますので、あわせて確認しておくと安心です。
CMRとSMRの違いに注意
一般的なNAS用途では、CMR(従来型記録方式)のドライブが適しています。SMR(瓦方式記録)は価格は抑えられますが、RAID再構築時に大幅な速度低下や、予期せぬ再構築失敗の原因になることがあります。
見分けにくい場合は、製品仕様を公式サイトで確認してください。型番が同じでも、製造ロットによって内部仕様が異なることもあります。
ベンダー公式の互換リストを参照する
NASベンダーが公開している「動作確認済みドライブリスト」は、必ず確認してください。メーカーによっては、最大容量の制限や特定のRAIDレベルでの動作確認有無なども併記されています。対応機種・ファームウェアバージョンとあわせてチェックしましょう。
統一か、混在か
RAID構成では、同一モデルのドライブを揃える方が安定性は高くなります。回転数が極端に異なるものを混在させると、温度差やアクセスタイミングのズレが起こりやすくなります。できるだけ同等性能で揃えるのが安全です。
ステップバイステップ作業手順
以下、UGREEN NASにおけるHDD交換の手順をご紹介します。

-
ハードディスクの無効化:
- [ストレージ]>[ストレージ管理]>[ストレージプールとスペース]に移動
- 拡張するストレージプールを選択
- [ハードディスク管理]>[HDD/SSD]で関連ディスクを選択
- 「···」ボタン→「無効にする」を選択
-
ハードディスクの交換:
- NASの電源を切り、古いHDDを新しいHDDに交換
-
ストレージプールの修復:
- NASを再起動し管理画面にログイン
- [ストレージ]>[ストレージプールとスペース]に移動
- ストレージプールを選択→「···」→「ストレージプールの修復」
- 修復ウィザードに従い新しいHDDを選択
- 「適用」をクリックして修復開始
よくある質問
ドライブメーカーを混在させても問題ないか?
異なるメーカーのドライブを混在させることは可能ですが、推奨されません。メーカーやモデルが異なる場合、回転数やキャッシュサイズの違いがRAIDパフォーマンスに影響を与える可能性があります。例えば、SeagateとWDのドライブをRAID 5で使用すると、書き込み速度が不均一になり、再構築時間が延びることがあります。最適な結果を得るには、同じメーカーとモデル、できれば同一ロットのドライブを選びます。
再構築中に通常の業務を続けられるか?
RAID再構築中も、NASは通常のデータアクセスやファイル共有を継続できますが、パフォーマンスが低下します。例えば、RAID 5の再構築中は、読み書き速度が半分程度になる場合があります。業務への影響を最小限に抑えるには、負荷の低い時間帯(例:夜間)に交換作業を計画します。
交換中に停電が起きたらどうなるか?
停電はRAID再構築を中断させ、データ損失やアレイの不整合を引き起こすリスクがあります。例えば、RAID 5の再構築中に電源が落ちると、パリティ情報が壊れる可能性があります。これを防ぐには、NASをUPS(無停電電源装置)に接続し、少なくとも再構築完了までの電源供給を確保します。