RAID0の容量効率 vs RAID1の復旧容易性徹底比較 【2025年11月更新】
前回の記事ではRAIDの基本概念について解説しましたが、ただ、RAIDにはいくつかの種類があって、それぞれ得意なことが違います。スピード命の「RAID 0」、頑丈さが自慢の「RAID 1」、そして両方のいいとこ取りをした「RAID 10」。どれを選ぶかで、あなたのNASライフが大きく変わります。

重要なポイント:
- RAID0は高速で大容量を活かせるが、冗長性がなく、1台の故障で全データを失うリスクがある構成です。
- RAID1は信頼性が高く、片方のディスクが故障してもデータを保てるが、容量効率や書き込み速度に劣ります。
- 地震リスク下ではRAID1が圧倒的に有利——日本特有の地震環境では複数ディスク同時故障の可能性が高く、RAID0は全データ消失リスクが顕在化。復旧容易性を重視するならRAID1が必須選択です。
- 用途で明確に選択を分岐——速度/容量重視ならRAID0、安全性/信頼性重視ならRAID1。
RAID0とRAID1の基本的な違い
NAS(ネットワーク接続ストレージ)を購入して設定する際、RAID0とRAID1のどちらを選ぶかは重要な決断です。この2つ、名前は似ていますが、目的や特徴が大きく異なります。簡単に言えば、RAID0はスピードと容量を重視し、RAID1はデータの安全性を優先する仕組みです。

RAID0(ストライピング方式)
RAID0は、データを複数のディスクに分割して保存する「ストライピング」という方法を使います。たとえば、2台の2TBディスクを使う場合、合計4TBの容量をフルに活用でき、読み書きの速度も速くなります。動画編集や大容量ゲームのデータを扱う人には魅力的ですね。ただし、欠点として「冗長性がない」ことが挙げられます。つまり、1台でもディスクが故障すると、すべてのデータが失われるリスクがあります。地震が多い日本では、この点が少し心配かもしれません。
RAID1(ミラーリング方式)
一方、RAID 1は「ミラーリング」方式を採用しており、同じデータを2台のディスクに同時に書き込むことで、高い信頼性を実現します。
具体的には、2TBのディスクを2台使用しても、実質的に使える容量は2TBのみとなります。これは、片方のディスクがもう一方の完全な“鏡像(ミラー)”となるためです。
この方式の最大の利点は、万一どちらか一方のディスクが故障しても、データが失われることなく運用を継続できる点にあります。 家族の思い出の写真や、仕事で欠かせない重要ファイルを何よりも確実に守りたいとお考えのユーザーには、まさにぴったりの構成だと言えるでしょう。
もちろん、デメリットにも目を向ける必要があります。RAID 0と比較すると、容量効率が低いこと、そして書き込み速度が遅くなりがちな点が挙げられます。そんな時は、RAID容量計算ツールの活用がおすすめです。** ご利用のディスクの本数と容量、構築したいRAIDレベルを入力するだけで、実効容量が一目でわかります。ご購入前の具体的な計画にお役立てください。
RAID0は壊れやすい?
RAID0は「壊れやすい」のではなく、故障時の影響が致命的なのです。ハードディスク自体の故障率はRAID構成に関係なく、品質や使用環境に左右されますが、RAID0ではそのリスクがデータ全体に及ぶ点が問題です。信頼性の高いHDDを選ぶための基準を押さえておくことで、そもそもの故障リスクを減らすことができます。特にRAID0のような構成では、HDDの品質がデータ保護の鍵を握ります。

地震による影響
日本は地震大国であり、NASが設置された環境で複数のディスクが同時に故障する可能性があります。たとえば、地震でNASが揺れた際に、ディスクのヘッドがクラッシュするリスクが高まります。RAID0では、1台の故障で全データが失われるため、地震リスクを考慮すると特に注意が必要です。
RAID1の弱点とは?
RAID1は信頼性が高く、初心者にも使いやすいですが、容量効率の低さ、書き込み速度の遅さ、コストの高さ、拡張性の低さが弱点です。日本の地震リスクを考えると、信頼性は魅力だけど、2台同時故障の可能性も頭に入れておく必要があります。使う目的に合わせて、これらのデメリットもしっかり検討してください。
主な弱点
- 容量が1台分しかない: 2台のハードディスクを使っても、実際に使える容量は1台分だけです。たとえば、2TBのディスクを2台使っても、保存できるのは2TBだけ。大量の写真や動画を保存したい場合には、容量が足りなくなるかもしれません。
- 書き込み速度が遅い: データを2台に同時に書き込むため、RAID0のような高速な構成に比べると書き込み速度が遅くなります。動画編集など、スピードが重要な作業には向いていません。
- コストが高い: 2台のディスクが必要なので、1台で済む構成に比べて初期費用や維持費がかかります。予算が限られている場合、ちょっと悩ましいポイントです。
- 容量を増やしにくい: ディスクを追加しても、使える容量は増えません。追加すると冗長性(安全性)が上がるだけなので、「もっと容量が欲しい!」というニーズには応えられません。
RAID 5とRAID 10:容量と安全性のさらなる進化形
RAID 0とRAID 1だけがNASの全てではありません。3台以上のディスクをお持ちの方や、より高い性能と安全性を求める方には、さらに強力な選択肢「RAID 5」と「RAID 10」が待っています。
RAID 5 (分散パリティ) – バランス型の優等生
3台以上のディスクで構成され、データと「パリティ」(誤り訂正符号)を全ディスクに分散して書き込みます。これにより、いずれか1台が故障してもデータを復元できる仕組みを実現しています。
- メリット: RAID 0に近い読み込み速度と、RAID 1に近い安全性を両立。容量効率に優れる(例:4TBx3台で 8TB 使用可能)。
- デメリット: 書き込み速度はやや遅い。故障後の「リビルド(再構築)」に時間がかかり、負荷がかかる。
RAID 10 (RAID 1+0) – 最高峰の性能と信頼性
RAID 1(ミラーリング)のグループを、RAID 0(ストライピング)で束ねたハイブリッド構成です。最低4台のディスクが必要で、それぞれのデータがミラーリングで保護されつつ、ストライピングで高速にアクセスできます。
- メリット: 非常に高い読み書き速度と、複数台のディスク故障にも耐え得る高い信頼性(ミラーグループが崩壊しなければ良い)を兼ね備える。
- デメリット: コストが最も高い。4台のディスクを使っても、使える容量は実質半分(4TBx4台→8TB)になる。
復旧の容易さ
NASでRAID構成を使うとき、「もしハードディスクが壊れたら、どうやって直すの?」という疑問が浮かびます。RAID0とRAID1では、復旧のプロセスが大きく異なります。
RAID1
「ミラーリング」と呼ばれる方式で、2台のハードディスクに同じデータを保存します。1台が故障しても、もう1台にデータが残っているため、復旧がとても簡単です。
RAID0
「ストライピング」と呼ばれる方式で、データを複数のハードディスクに分散して保存します。速度は速いものの、1台でも故障するとデータ全体が失われるため、復旧が難しくなります。
地震で複数台が同時に故障するリスクを考えると、RAID0は重要なデータには不向きです。復旧のしやすさを重視するなら、RAID1がおすすめです。シンプルでリスクが少なく、特に初心者や地震対策を考える場合に適しています。
結局、どれを選べばいい?用途別・RAID選択ガイド
ご自身のニーズに最も適したRAIDはどれか?
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【データ保全のプロ】「絶対に失いたくない」データが最優先
- 推奨: RAID 1 または RAID 10
- 対象: 家族の思い出の写真・動画、重要な仕事の書類、バックアップの保存先。日本での地震リスクを考慮すると、この選択が最も堅実です。
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【バランス派】「速度も安全性もそこそこ欲しい」
- 推奨: RAID 5
- 対象: ある程度の安全性を保ちつつ、大容量のメディアライブラリ(音楽、動画)を管理したい方。3台以上のディスクを用意できる環境向け。
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【スピード命】「容量と速度が最優先、データは失ってもよい」
- 推奨: RAID 0
- 対象: 動画編集の暫定作業ファイル、ゲームのインストール先など、一時的で高速な処理が求められる場面。必ず別の媒体に定期的なバックアップを取ってください。
重要: どのRAID構成を選んでも、RAIDはバックアップの代わりにはなりません。災害やウイルス、誤削除からデータを守るためには、3-2-1バックアップルールに基づいた別途のバックアップ戦略が必須です。
RAID選びでよくある疑問
RAID 1からRAID 5に後で変更できますか?
UGREEN NASにおいては、RAIDレベルの変更機能をご利用いただけます。
【重要】ご変更前に必ずお願いいたします:
- データ消失を防ぐため、必ず全データのバックアップを取得してください。
- 変更作業には長時間を要する場合があり、その間はNASのご利用が制限されます。
以上の点をご了承いただいた上で、詳細な手順は下記の専用ガイドをご参照ください。
→ RAIDレベル変更 詳細ステップガイド
RAID 0で1台ディスクが故障したら、データは完全にアウト?
はい、基本的には専門のデータ復旧サービスに依頼するしかなく、復旧は保証されず、非常に高額な費用がかかります。RAID 0は故障に対する復旧の容易さが最も低い構成です。
2ベイNASでRAID 5やRAID 10は使えますか?
A. いいえ、RAID 5には最低3台、RAID 10には最低4台のディスクが必要です。2ベイNASで選択できるのは、基本的にRAID 0、RAID 1、またはJBOD(結合)です。
SSDでRAIDを組むメリットは?
はい、SSDでRAIDを組むことで、さらに高速な読み書き性能を引き出せます。特にRAID 0は非常に高速になります。ただし、NAS向けの耐力のあるSSDを選ぶことが、長期安定運用のポイントです。
